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狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ梯 久美子 新潮社 2016-10-31売り上げランキング : 433Amazonで詳しく見る by G-Tools


島尾敏雄の『死の棘』に登場する愛人「あいつ」の 正体とは。日記の残骸に読み取れた言葉とは。 ミホの「『死の棘』の妻の場合」が未完成の理由は。そして本当に狂っていたのは妻か夫か──。未発表原稿や日記等の新資料によって不朽の名作の隠された事実を掘り起こし、妻・ミホの切実で痛みに満ちた生涯を辿る、渾身の決定版評伝。


 「死の棘」と「火宅の人」の内容にガッツリ触れています。



「死の棘」を読んだのはもう何年も前だ。まだ結婚する前だった。
世評高い私小説の極北。
夫の情事のため精神を病んだ妻。
加計呂麻島という南の島で暮らしていた少女(と読めた)と特攻隊の隊長が出会い恋に落ち
結婚した。
そして夫は浮気する。
小説はえんえんとその浮気を追求する妻とその妻に便乗するかのように荒れ狂う夫を描いていた。
「火宅の人」は高校生くらいで読んで
こちらもまた作家である夫が浮気をする(ことをおこした、という表現になっていた)。
同じようなことを描いていて
発表された時期も二、三年のずれがあるくらい。
発表形式もそれぞれ短編連作のようになっていて1冊の長編としてのちにまとめられる。
なのに読後感がまったく違った。
両方とも子どもがいるけれど
「死の棘」は夫婦だけのシーンが多く(ときおり荒れ狂う夫を止めようとする描写があるくらい)
「火宅の人」は子どものシーンも織り込まれている。
ユーモラスに描かれていてそれがさらに悲しくなるところは似ていた。
しかし「死の棘」は笑えない。
ここの子どもたちはどうなるのか
そして描かれていないところではどうなったのかと思っていた。

島の巫女のような少女と隊長の恋。
そこで終わっていれば神話のようだったのに
少女は妻となり、隊長は夫となった。
島を去り、本州で暮らして妻は疲弊した。
その疲弊もまた狂気にプラスされていく、と読んでいた。
この評伝はそこから覆されていく。
少女となっていたけどミホはもう25才で働いた経験もある女性だった。
そしてその島での恋愛でミホは性病もトシオからもらってしまう。

続きます

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